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ABSパーツへの塗装による割れの原因と対策

2020年6月5日

こんにちは。

あなたはプラモの塗装でABSパーツを割った事はありませんか?
せっかく塗って仕上げたと思ったのに
動かしてみたらボロッと…トラウマものですよね。

そんな悲劇があるので、ABSパーツがあるガンプラの説明書にも
こんな記述があります。


今回はこのABSパーツがなぜ割れるのか、
割れを防ぐにはどうすればいいのか
をお伝えしていきます。


以前、ABSパーツの割れについての検証を行いました。
その検証により、割れの原因と対策を知る事ができました。


結論から言いますと、

「ラッカー系で塗装しない方が無難」

だと僕は思います。


以下でどのような検証を行ったかをお見せしていきますが
そちらを見てもらえば、なぜラッカー系をオススメしないか
分かってもらえるかと思います。

ではABSの割れについて詳しく見ていきましょう。

 

1.ABSの割れの仕組み

そもそも、ABSがなぜ割れるのか?という仕組みなんですが
まずこういうABSパーツがあるとしましょう。
可動軸によく使われている軸穴のついた形状です。

プラモを組み立てる際に、このように
可動部の穴に別パーツの軸を挿し込みますよね。

挿し込む時、それなりにはめ込みがキツいですよね。
その際に、挿し込んだパーツに負荷がかかって
目に見えない細かいヒビが入るんです。

そこを塗装すると、塗料の溶剤分が
細かいヒビに浸透してパーツがもろくなり…

このように割れてしまうのです。
パキッと割れるというより、モロッと崩れ落ちる感じです。

ABSの塗装による割れの仕組みはざっくり言えばこのようになります。
ABSパーツを塗装で割ってしまった方はこういうパターンではないでしょうか?


塗料の溶剤の浸透による割れなのですが、
塗料にもラッカー・水性アクリル・エナメル…
色々種類がありますよね。

ここからが本題なのですが
どの溶剤ならABSが割れるのか実験していく、
というのが今回行った検証内容です。

2.ABSの溶剤による割れ実験

2-1.検証内容

検証内容の詳細をご説明しましょう。
こういうABSランナーを使います。
すみっこにパーツの番号タグがいくつもありますね。
1番とか2番とか。


ここに穴を開けて、ランナーを挿し込むんです。
ちょうど先ほどの図のように、穴付近に負荷をかけてやるんです。

挿し込むランナーは3mm径ですが、開ける穴は2.9mmにして
挿し込みがキツくなるようにします。
そっちの方が穴付近に負荷がかかるので。
で、こんな風に2.9mmの穴をぽこぽこ開けました。


ここにランナーを挿し込んでから、付近に各種溶剤を塗って
ぐりぐりランナーを動かして割れるかどうか、という実験になります。
1回では正確なデータに欠けそうなので、3回ずつ行います。

ABSにも、バンダイのものとコトブキヤのものとで
若干成分が違うようなので、両方で実験してみます。

2-2.溶剤ごとの実験

では、使用した溶剤と結果をお見せしましょう。


クレオス Mr.カラーうすめ液。ラッカー系。


Mr.うすめ液 中 110ml T102

ぐりぐりしたらランナーがボロボロ崩壊していきました。
全滅です。


ガイアノーツ モデレイト溶剤。ラッカー系。


ガイアノーツ T-07h モデレイト溶剤 (特大) 1000ml

Mr.カラーうすめ液同様。
全滅です…。

マジでこんな風になります。


タミヤ ラッカー溶剤。


タミヤ メイクアップ材シリーズ No.77 ラッカー溶剤 (250ml) 87077

上2つと同様。
全滅です。。。


タミヤ エナメル溶剤。


タミヤカラー エナメル X-20 溶剤大びん

プラを割る事で悪名高いヤツですが、ABS相手では
なんと割れませんでした!


ジッポーオイル。
エナメル塗料の拭き取りとかに使いますね。


ZIPPO(ジッポー) Zippo オイル缶 【大缶355ml】

ちょっとゆるくなった感じがありましたが、
タミヤエナメル溶剤同様割れませんでした。


クレオス Mr.ウェザリングカラーうすめ液。


GSIクレオス WCT101 Mr.ウェザリングカラー専用うすめ液 110ml

割れる気配がありませんでした。
エナメル系、結構ジャブジャブ塗ってるんですが
割れませんでしたね。


クレオス 水性ホビーカラーうすめ液。
水性アクリルのアルコール系溶剤です。


GSIクレオス 水性ホビーカラーうすめ液 400ml T111

ちょっとゆるくなった感じがありますが、
割れませんでした。


レオス アクリジョン エアブラシ用うすめ液。水性。

なんでも、クレオス公式でアクリジョンはABSに塗れる、
との事なので、大丈夫だとは思いましたが
やはり割れませんでした。


ファレホ エアブラシシンナー。水性。

こちらもボークス店員さん情報で割れないとの事なので
試してみましたが、何事もなく割れませんでした。


ペンもいきます。
ガンダムマーカー流し込みスミいれペン。


GSIクレオス ガンダムマーカー 流し込みスミ入れペン グレー GM302

実は小さくこんな注意書きがあるんですが

ウソではありませんでした…。
ランナーがボロボロ崩れていきました。
でも奇跡的にコトブキヤのABSは一つ耐えました。


ガンダムマーカー消しペン。


GSIクレオス ガンダムマーカー GM300 消しペン

凄まじい勢いでランナーが崩壊しました!

塗ってない所まで崩れていきました…これは危険です!!


タミヤ スミ入れ塗料。


タミヤ スミ入れ塗料 (ブラック)

エナメル溶剤同様、割れませんでした。


クレオス Mr.ウェザリングカラー


Mr.ウェザリングカラー マルチブラック40ml

うすめ液同様、割れませんでした。

2-3.割れテスト結果

割れテストの結果はこうなりました。

ラッカーは悲惨な結果…全滅です。
意外なのが、エナメルには結構耐えるみたいですね。
通常のPS素材で同じ実験やると割れそうですが。


この結果が出てしまった以上、僕としては

ABSにラッカー塗装はマジでおすすめしないんですが

それでもどうしてもラッカーで塗装したい!
という方のために、ABSをラッカー塗装するにはどうすればいいのか?
という実験を行いました。

3.ラッカーでの塗装実験

3-1.ガイアカラー

先日、twitterでフォロワーの模型誌ライターの
鋭之助 初代 日野さんという方から
こんなリプライを頂きました。

ガイアカラーってラッカー系なんですが、気になったので

試しにコレでABSを塗ってみることにしました。

先ほどのように、穴にランナーを挿して負荷をかけた状態で
ガイアカラーを原液で塗ったり
モデレイト溶剤で薄めて塗ったりしてみました。

すると、こんな結果に。

原液で塗るのは何ともないようなのですが、やはり濃くて
塗りづらいです。

溶剤を足して1:1で塗ってみると、
バンダイのABSは割れましたが
コトブキヤのABSは割れませんでした。


そこで、バンダイは少し濃い目にして
塗料1:溶剤0.5で塗ってみると大丈夫でした。

変わってコトブキヤはさらに薄めて
塗料1:溶剤2にして塗ると割れました。

塗料に溶剤分が増えると、さすがに割れるようですね。
溶剤は少なめで塗った方が危険度は減るでしょう。

3-2.サーフェイサー後の塗装

ABSを塗装するにはまず下地にサーフェイサーを吹くといい、
とも聞くので真偽はいかほどか、とこれも試してみました。
サーフェイサーの上から先ほどの条件でガイアカラーを塗ってみると
このような結果に!

塗料1:溶剤2でも割れなくなりました!
サーフェイサー、効果あるようですね!

ただ、サーフェイサー自体もラッカー系なので
エアブラシでシャビシャビに溶剤で薄めて
至近距離でドバ吹き…なんて事をやると
割れると思います(試してはいませんが)。


せっかくなので、ABSキラーのガンダムマーカー消しペンも
サフの上から塗ってみました。
コトブキヤが1つ割れましたが、結構割れが防げているようです!
ただ、消しペンはサフを溶かすのであまり実践的ではないかも…。


GSIクレオス Mr.サーフェーサー 1000 徳用 スプレー 170ml ホビー用仕上材 B519

3-3.エアブラシ塗装

また、エアブラシだとサフなし直吹きでも
遠くからうっすらと吹いていくのを繰り返していくと
このように。

近くでドバ吹きすると、溶剤ごとべちゃっとパーツについて
それが割れの原因となってしまいます。
遠くから吹くと、パーツに塗料が付着するまでに
溶剤分が揮発するので、溶剤による浸透をなくす事ができます。

3-4.パーツをはめ込む前に塗装

冒頭のパーツの説明でヒビの説明をしましたが、

「そもそもヒビが入る前に塗ればいいんじゃないの?」

と思われた方もいるかもしれません。
で、実際にどうなるかやってみました。

ABSパーツを切り出す前にラッカー溶剤をパーツに塗り、
少し乾かしてからパーツをはめ込むと
割れずに可動させる事ができました!

ABSパーツは組む前にランナー状態で塗装してしまうのも
一つの手かもしれませんね。
塗装の際は念のため注意を払った方がいいでしょう。

3-5.ラッカー塗装まとめ

ABSをラッカーで塗装するには
・筆塗りならガイアカラー。溶剤は少なめで
・下地にサーフェイサーを吹いてから塗装するとリスク減
・エアブラシなら遠くからうっすらと何度も重ねて吹く
・いっそ組む前に塗る

また、検証はしていませんが
ガイアマルチプライマー(ミッチャクロン)を下地に塗ってから
塗装すると良いようです。
割れの確率がゼロになる訳ではないでしょうが…。

4.おわりに

後半はラッカーでの塗り方を紹介しましたが、
ラッカーは前半の実験にて溶剤直塗りで割れが確定している以上
ラッカー系でABS塗装をやって「絶対に」割れない方法は
多分ないでしょう。割れのリスクが少なからずあると思います。


なので、何度も言いますが僕個人としては万全を期すなら

「ABSにラッカー塗装はやらない方がいい」

のを強く推奨します。
できるならファレホかアクリジョン


ラッカー塗装については自己責任でよろしくお願いします。
説明書の注意書きの通り、オススメできません(笑

今回の内容の動画です(ほぼ同じ)












ではまた!

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